タイトークラシックス
高精細なグラフィックの実現や、ゲームコントローラーに対応。TAMAYO氏により2000年に収録されたアレンジBGMも追加、稼働当時のアーケードゲームの難易度でプレイしたい方にも応えられる等、多数のゲームモードを用意。
こんにちは。バカタール加藤です。
元ファミ通編集長(ヒゲ&メガネ)では、鼻に赤ペンに挿している方です。
さてさて。
今回は、「タイトークラシックス」のシリーズ5作品目、「レイクライシス」について。
…なんですが、例(←ダジャレでいいです)によって調べてみたら、「レイクライシス」が発売されたのは1998年。
1998年といえば、ノストラダムスの予言によって「恐怖の大王がやってくる」とされていた年の前年だ!
翌年には、人類が滅んじゃうかも…!? 地球滅亡してるかも…!? という噂すらあった世紀末の気配漂う、1998年のその頃、タイトーの人たちは「”Con-Human”という、ニューロネットワークシステムにより滅亡の危機に立たされる人類の戦い」をゲームとして制作していたわけです(もしかしたら、”滅亡ブーム”だから作っていた可能性も…)。
「レイ」シリーズは、1994年「レイフォース」、1996年「レイストーム」、1998年「レイクライシス」と、2年ごとにきっちりリリースされているので、当然といえば当然だが、翌年には、自分たちも地球もすべて滅んじゃうかもしれないご時世に、そして、ゲームの開発の規模も予算も巨大化し、開発期間もより長期化していく時代に、2年スパンをきっちり守っていた、というのは、相当に”律儀”なことだったと思います。
そもそも、今現在すでにリリースされた「タイトークラシックス」の各タイトルの中でも「レイクライシス」はいちばん最近のタイトルです。たしかに、20年近く前の作品なんですが、そこまで”クラシック”感は強くない(むしろ、最近のゲームと言ってもよい感じ=後述します)。
ということで、1998年の、家庭用のゲームシーンを振り返ってみると…。
1998年 家庭用ゲームの売上ランキングTOP10は、
1位 | ポケットモンスター赤/緑/青/ピカチュウ |
---|---|
2位 | バイオハザード2 |
3位 | グランツーリスモ |
4位 | ドラゴンクエストモンスターズ テリーのワンダーランド |
5位 | 鉄拳3 |
6位 | パラサイトイヴ |
7位 | 遊戯王 デュエルモンスターズ |
8位 | ゼノギアス |
9位 | ポケモンスタジアム |
10位 | ゼルダの伝説 時のオカリナ |
となっていて、旧ハードのゲームボーイで2年前(1996年)に発売された「ポケットモンスター」が大ヒット(青、黄色バージョンも出て、ロングセラーに)。「ドラクエモンスターズ」「遊戯王」も、ある意味では普及しきったゲームボーイでヒット。が、据え置きゲーム機ではプレイステーションが家庭に普及し、「バイオハザード2」「グランツーリスモ」「鉄拳3」「パラサイト・イヴ」「ゼノギアス」などが上位を席巻。また、「メタルギアソリッド」が発売されたのも、この年でした。ちなみに前年の年末に発売された「電車でGO!」も1998年中に50万本以上のセールスを記録し、上位にランクイン。(そんな中、NINTENDO64でも「ポケモンスタジアム」「ゼルダの伝説 時のオカリナ」ががんばっていた…)
また、セガの新ハード、ドリームキャストの発売も大きな出来事だった(はず)。その一方、ゲームボーイで写真を撮って遊べる「ポケットカメラ」も発売になっていて、モノクロ画面のハードが生き残りつつも、ネット時代を見据えた新ハードが登場していたわけで、じつに多様性に富むゲームハードが存在していた時代だった。
そして、肝心のアーケードゲームの世界では、「Dance Dance Revolution」「ポップンミュージック」が稼働を開始。「バストアムーブ」「ソウルキャリバー」「ストリートファイターIII」などもリリースされている。音ゲーが本格的なブームになり、かつプリクラ(「プリント倶楽部」)も普及しつつあり、女性がゲーセンに入るようになったタイミングだ。また、タイトーからは前年1997年に「電車でGO!」が発売されている。格闘ゲームのブームは継続しつつも、音ゲーやクイズゲーム、運転ゲーム等の誰にでもわかりやすい(キャッチーな)ゲームが増えていた時代…。
なので、大型の筐体でもないシューティングゲームは、さらにゲーセンの隅に、または奥に、追いやられていった時期だ。とにかく、家庭用でもアーケードでも、ハードでもソフトでも選択肢が爆発的に広がり、選んでもらうことがまずは重要になってきた時代だ。そんな逆境の中で「レイクライシス」はリリースされた。
にも関わらず、「レイクライシス」は、じつに実験的な作品だ。
ロックオンの爽快感や、スコアアタックの面白さなどシリーズを通じてのゲームの肝となる部分は同様に、基本的なゲームのシステムは、「レイストーム」のそれを受け継いでいる、とはいえ、プレイヤーがプレイデータを保存できたり、ステージが1本道ではない展開になったり、「浸食率」という数字がプレイに影響を与えたり…、「レイ」シリーズを根本的に見つめなおして、あえて”深堀り”をしている作品なのだ(そこにも、ある種の、ものを作る上での”律儀さ”を感じる)。
演出面においても、「レイストーム」的な、3Dを駆使した演出がより強化されて、ボスの周囲を360度回りながら打ったり、ステージのパースが変わって自機が”上”ではなく”奥”へ進むシーンなど、グッとくるシーンが多い。
今回iOS版をプレイしてみても、プレイ感に古さはまったく感じない。リアル世界の香りに、煌びやか、かつ、エレクトリックな気配が混じった絶妙な表現が、古いタイプのシューテイングっぽさとは一線を画す、ステージ感(?)を生み出しているのだ。思いのほか、”今”のゲームな感じがある。
だが、それもそのはずで、「レイクライシス」が何よりも衝撃的なのは、じつは自機が闘っている世界が宇宙空間や惑星上ではなく、サイバーな空間(←自分の認識では)であって、敵自体も「レイ」シリーズの人類を生存に関わる根本的な概念”Con-Human”が作り出すプログラム(的な攻撃?)だということかもしれない。前作2作とはシリーズとして、設定を共有しているが、その本質的なところ(ゲームとして描いているところ)が違うため、前2作品とは根本的に異質なのだ。
前2作品と同じようなシューティングゲームでありながら、ネットワーク上のサイバーなスペースにおける戦いを映像化したもの、というように抽象的な世界をゲームとして表現しているからこそ色褪せないのかもしれない。当時の表現、デザインが、どこまでそれを意図したかはわからないが、今現在でも未来として通用する感じがある。
一方、なので、必然的に”浸食率”というような概念が必要になったり、じつはサウンド面でもいわゆるよりコンピューターサウンド的な演出が施されている、ともいえるだろう。
ゲームそのものが、そもそも何と何の戦いなのか? それを、ゼロから描いているのではなく、全2作のリアルな空間における戦闘と、ネットワーク世界内におけるデジタルな戦いのイメージを、重ねるところは重ねつつも、根本的に表現として差別化しなくてはならなかったところが、この「レイクライシス」の”不思議なありよう”なのでは? とも思う。
けっして、否定的な意味ではなく、プレイステーションの台頭やゲームセンターにおける女子や非ゲーマー層の取り込みにある程度の成功が見えて、ゲーム産業としても世界的にも国内的にもゲームのすそ野が拡大している時代に、ゲームのマニアックなジャンルであるシューティングゲームで、じつに内省的な、ある意味では、哲学的な”深堀り”が行われていた、ように見えるのだ。
縦シューのファンは、それをそこまで認識せずとも、プレイ可能であっただろうし、それは作り手が押しつけるようなものでもなかっただろう。元々、古くはシューティングゲームのステージの設定は、まあ、取ってつけたものでよかった。西暦3000年でも、宇宙世紀600年でも、なんでもよかった。ゲームがおもしろければ。
そして、実際に大半のゲームが、かつてはそうであった、はずだ。(自分もアルバイトで、シューティングゲームの取り扱い説明書の原稿を頼まれて、そんな”なんちゃって世界観”をあとづけで書いたこともある。)
が、この「レイクライシス」の世界観、ステージ設定は、そんないい加減なものではない。ゲームの企画の根幹にも影響をあたえる、あるいはその大本になっている可能性もある。そんな重要なものだ。でありながら、RPGやアドベンチャーゲームではないので、その説明はプレイ自体にはあまり必要ではない。だから、抽象的で、今もって謎な部分も多い。だが、だからこそ、かつて一世風靡した、シューティングゲームの文脈を変えたともいえる「ゼビウス」にも、系譜としてはつながってみえてくる。
じつは、1998年は、国内の音楽CDの生産金額、生産枚数が国内市場において過去最高を記録した年なのだそうだ。音楽チャートを見るとSMAPの「夜空ノムコウ」が初のミリオンヒット、L'Arc~en~Ciel、GRAY、T.M.Revolution、SPEEDらがヒットを飛ばしつつ、鈴木あみ、モーニング娘。、宇多田ヒカル、aiko、ゆず、浜崎あゆみらがデビューした年でもあり、音楽産業は才能を世の中に続々と送り込んでいた時代だった。ビジュアル系バンドのブームもこの頃だ。日本の音楽シーンが多様性とは華やかさを兼ね備えていた時代だ。
だからこそ、音ゲーが生まれた時代でもあり、プリクラも流行り出した時代でもあったのだろう。街中や身近にある、商業的なエンターテイメントがとても活気に満ちていて、広がると同時に、資金的にも好循環している時代だったと思われる。
その中で、ミーハーなベクトルと真逆の、正しい意味でのゲームオタク、コンピューターオタク的なベクトルに突き進んだゲーム、と言えるのではないだろうか。
だが、その”律儀さ”が、時を超えてゲーマーの我々には、今もってなお、多くの謎をはためかせ、不思議な魅力を放っている源泉なのではないか、と自分には思えるのだ。
それは、シューティングゲームのあり方を真剣に模索したドキュメントであり、作り手の魂の込め方がどこまでゲーム上で実効的なのか、という実験のようにも見える。
そして、そのゲームの有り様を模索した痕跡は、「レイクライシス」同様、「たけしの挑戦状」しかり、「タイムギャル」しかり、なのだった。当時のみならず、アプリ化にあたっても、そこはブレずにやってますよ! という声が聞こえそうなくらい…。
つまり、「タイトークラシックス」というシリーズが意図したことは、ゲームそのものの有り様を問い直す、ということだと断言できそうだ。
…というようなことを考えながら、でも、そんなことを書いて終わるのは、当たり前すぎてつまらないよな、というところがあるのも事実だ。困った。
そこで、(自分はiPhoneを使っているので)iPhone(iOS)対応のコントローラーで遊んでみようと、量販店に出向いた。シューティングゲームだし、せっかくゲームコントローラーにも対応! と謳われているのだから、コントローラーでプレイしてみたい! と思ったわけだ。
だが、某量販店Aカメラさんでは、どこを探しても見つからず、スマードフォン館にも、ゲーム売り場にも、携帯アクセサリー売り場にもなかった。店員さんに尋ねると、「以前置いてあった商品も販売期間が終了しまして…」というような話だった。
VR系の商品も売り場にけっこう置いてあり、スマホをVR用に顔面に装着してしまったら、それを操作するものも絶対に必要なはずなのに…。意外な盲点だった。これはVRの普及にもよろしくないですよ、ほんと。ゲーム業界的に大問題かもしれないですよ、えらい人ーっ。
…と思いながら、次は某量販店B電気さんに。案内されたのは、コントローラーではなく、コントローラー風のグリップ(スマホケースに持ち手がついただけのもの)だった。失望感で、突っ込む気力も失せてしまった。大問題ですよ、B電気さん。地域最大級の売り場なのに…、社長さんっ。
続いて某量販店Cカメラさんに。店員さん曰く「今扱っているのはこれだけです」。ついに、iOS対応のコントローラーを発見!!
そこで購入したのがコレ。パッケージには一切日本語がない。(※ただ説明書は多言語対応で日本語部分もあり)
なんと、お値段が9000円近くもするシロモノ。だが、選択肢は1つだけだったので、月3万円のお小遣いの自分には超高級品だが、カードで支払った。
「レイクライシス」が1200円なんで、1200円のゲームを遊ぶために、数倍以上もする値段のコントローラーを購入したことになる。
編集部に戻り、Bluetoothをオンにして、さっそく試すと…
無事に接続も完了!
しかも、コントローラー上部にiPhoneをセットできる。
が、ここに取り付けちゃうと、iPhoneで写真が撮れないことが発覚!(←バカ)
なんで、わざわざT君に撮ってもらったのがこちら。
オプションの設定で、ボタンの割り振りも変えられるし、音声はイヤホン端子端子から出すことも可能。とはいえ、Bluetothだと、以前Wirelessのイヤホンを買った時に遅延がひどくて音ゲーは無理だったことがあるので、遅延も心配…。
…だったが、プレイしてみたら、遅延は気にならず。
自機の移動は十字キーだったが、こちらも違和感はなし。
コントローラー上部のiPhoneの液晶も一体感がある場所で、新型の携帯ゲーム機を遊んでいる感覚。
で、思いのほか、気にいってしまった。
選択肢がなかったので、たまたまこの商品を買ったわけだが、ハズレではなかったようだ。
また、「レイクライシス」の操作感も良好で、タッチ入力による操作よりも、自分はこちらの方がより快適だった(ゲーマーなので当然だろうが)。意外なくらい、違和感がない。
そして「レイクライシス」のサイバーなステージが、このコントローラーのデザインにしっくり来すぎる! なんだろう、この不思議なマッチング感は。ほんと。
というわけで、見た目もカッコいいので、電車の中とかで遊んでみて、周囲の反応も見てみたい、と思っている今日この頃です。
バカタール加藤
プロフィール
株式会社Gzブレイン所属。
「ファミ通64+」、「週刊ファミ通」、「Walker47」等の編集長を歴任。現在ニコニコチャンネルにて、「世界でいちばん役に立たないゲームch.」や「ユリコちゃんねる」といった番組をプロデュース。
また、毎月第2・第4火曜日、「東京中日スポーツ」の紙面で「オヤジでもわかるゲームな話」を連載中!